偏差値のミステリー?

かつて、「ポン・キン・カン」という言葉があった。「日本大学・近畿大学・関西大学」の略。しかし、今や、関西大学は「カン・カン・ドー・リツ」の一角を担う「私学の雄」となった(かく言う我が家も、私を除いて、カンペキな関大閥である)。要するに、昔は偏差値の低かった学校が今やとびきりの「高偏差値校」になっているとか、「カン・カン・ドー・リツ」は昔に比べてずいぶん偏差値が上がった(難しくなった?)というようなハナシ。

しかし、よくよく考えれば(考えなくとも)わかることだが、18歳人口はどんどん減少しているのだから、大学はどんどん入り易くなっている。「カン・カン・ドー・リツ」あたりにしても、昔に比べると学生のほんとうの学力、「地頭」(じあたま)とでもいうか「実力」というか、そういうものは、低下の一途をたどっているはずである。それにもかかわらず、なぜ「カン・カン・ドー・リツ」の名目偏差値は上昇しているのだろうか?

この「ミステリー」を解く鍵は、大学進学率の上昇にあるのだろう。
18歳人口が減少しているにもかかわらず、各大学の定員数は変わらない。だから、東京大学を筆頭にすべての大学の入学競争は緩和されて、入り易くなっている。それなのに、各大学の偏差値が上昇しているのは、大学進学率が上昇して、大学入学者全体の平均学力がどんどん低下しているからであろう。世間に公表される(名目上の)「偏差値」とは、あくまで、ある年の大学入学者たちのあいだでだけ測定された相対的な学力指標であることに注意すべきである。

ということで、さいきん、そういう分析をするためのモデルを考えている(こういう分野はトーシロなのでトンでもない勘違いがあるのかもしれないけれど、先行研究のようなものも見当たらないし・・・というか、まだ真剣に先行研究を探す段階でもないので^^)。

ある個人の実力(地頭、時代不変のいわば「実偏差値」)の尺度を a として、これがある確率分布にしたがうとする。この分布関数の逆関数を φ としよう。18歳人口を N そのうち大学に進学する者の数を R とすると、大学進学率は R/N 。日本全国の大学を、No1の東京大学、No2の京都大学等々と入りにくい(難しい)順に並べて、それぞれの入学定員を累積したものを C(k) とする。C(1) は東京大学の入学定員数、C(2) は東京大学と京都大学の入学定員数の合計、C(k) は東大から k 番目に難しい大学までの入学定員数の合計となる。受験生は実偏差値の順に上位校へ進学していくものとして、簡単化のために多少の例外は無視する。
これらの仮定のもとで・・・

ある年に日本全国で大学に進学した者のうち最低の地頭を持つ(いちばんアホな)者の地頭の程度は φ(1-R/N) 、日本で k 番目にむずかしい大学に入学した者たちの地頭の程度は φ(1-C(k-1)/N) から φ(1-C(k)/N) のあいだにおさまり、k 番目にむずかしい大学の「実偏差値」は φ(1-C(k)/N) となる。

容易にわかるとおり(φは単調増加関数だから)、各大学が定員数を維持して(C(k)は不変で)、18歳人口 N が減少すると、各大学の実偏差値 φ(1-C(k)/N) は低下する。東大も京大も昔より入り易くなり、入学者の実学力(の平均)は低下する。

しかし、世間で公表される「名目の偏差値」はそうはならない。名目の「偏差値」H は、その年の大学入学者全員の学力の平均と分散を基準にして計算されるからである。日本で k 番目にむずかしい大学の「名目偏差値」 H(k) は、次のように算定されているはず(以下、E[ | ] は条件付き期待値計算のオペレータ)。

H(k) = { φ(1-C(k)/N) – m }/s * 10 + 50
ここに
m = E[ a | a > φ(1-R/N) ], s2 = E[ (a-m)2 | a > φ(1-R/N) ]

18歳人口 N が減少すると、実偏差値 φ(1-C(k)/N) は低下(入学者のほんとうの実力は低下)するが、同時に日本では大学進学率 R/N が上昇してきたから、日本全体の大学入学者の平均学力 m も減少し(標準偏差 s は上昇するが)、相対的な名目偏差値 H(k) は(上位校では)上昇してきた。

というようなモデルをいま考えていて、数量ベースの実証ができないものかと思うのだけれど・・・